重度の知的障がいを伴う自閉症である私の子どもは、自分の限られた要求、気になる予定の確認、
日常生活上のあいさつ程度を単語レベルで発する以外は、ほとんど会話ができない。 自分が経験したことがないことは、言葉で聞かれても理解も想像も難しいので、 「好き?嫌い?」「したい?したくない?」「どっちがいい?」などど聞かれても、 自分の気持ちや意思を伴って答えることはとても難しい。 自閉症特有のパターン行動や、オウム返し、こだわりもあるので例えば病院で医師に 「調子はどうですか?」と聞かれると「どうですか?」とそのまま元気に返事してしまう。 日常生活でもおやつに「りんご食べる?せんべい食べる?」と聞くと、本当はりんごを食べたいのに 後半に聞いた「せんべい」の言葉が印象に強く残り、「せんべい」と答えてしまうこともある。 また、いつも行くスーパーで買い物すると、毎回買ってもう飽きてきているおやつでも、 声をかけずにいると同じ物を毎回選んでしまうこともある。この場所ではこれを買うというパターンにはまり 自分では抜け出なくなってしまうのである。本人が選んだ物でも、意思とは異なることが多々ある。 成長過程で、小学校、中学校、高校、そして卒業後の進路、就職、生活の場と本人の人生を左右する大きな選択を迫られることが幾度となくあるが、自分で「こうしたい。ここに行きたい」と伝えることが難しい当事者の保護者は、 今までの本人の様子や育った過程を振り返り、きっとこの選択があっているだろうという感で 選択をしているというのが現状ではないかと思う。 「それは本人の意思・選択ですか?」と聞かれたら、「本人の意思は私にはわかりませんが、 多分本人に一番合っているのではないかと思い私が選択しました」と答えるしかありません。 その選択がどうだったか、本当にあっているのかを常に気にしながら過ごしている。 支援者として、大きな選択の場面に立ちあった時には「それは本人の意思・選択ですか?」と問うのではなく 「本人にとって意思に沿う選択になるように、一緒に考えていきましょう」そう伝えられる支援者でいたいと思う。
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